生き物の好むエサ

安里川ファンクラブ

2011年12月09日 10:53

皆さんは好き嫌いありますか?
そして、「これは好き」という食べ物はなんですか?



自分はお酒のむようになって、好き嫌いがだいぶ減りましたが、それでもちょっとありますね(笑)

人に好き嫌いがあるように、生き物にもどうやら好き嫌いというか、好んで食べるえさがあるようなんです。
たとえば、昔から釣り人の間では「ガーラ(ヒラアジ類)はボラが好物」と言われてきました。

しかし、ガーラはガーラでも、大型になるロウニンアジに限っての話で、実は別に好物となっている生き物がいることに気づきました。
たとえばこの季節、港に群がるミジュン(和名ミズン。沖寄りに多いヤマトミズンと分けて、イリカーミジュンとも呼ばれる)や、夏の鳥山下に群れるシラスには、ロウニンアジより小型のオニヒラアジがよくいます。



全長15cmに達するミジュンの群れには、20kgくらいのロウニンアジも付いたりするのですが、シラスに関してはロウニンアジが付くことはなく、バキューム型の捕食をする2~3kgのオニヒラアジの群れがほとんどです(オニヒラアジを食いにロウニンアジが居つくことはあるかもしれません)。

そして、生き物やその大きさによって、好みの餌となる生き物(ベイト)がいることに気づいたのは、安里川で見たアシチン(ドロクイ類)の幼魚でした。
ガーラはボラが好物だという伝えによって、ボラだと思い込んでいたのですが、水面を割るように20~30cmクラスのガーラが捕食している小魚は、ドロクイだったのです。
この事に気づいてから、ルアーフィッシングを楽しむさい、実際に捕食されている小魚の種類や、小魚を取り巻く環境を意識するようになったのです。


ちなみに、ドロクイもミジュンも同じニシン目。
シラスの群れを構成しているのも、ミズスルルやミジュンの稚魚でニシン目。
ともにうろこが剥がれやすい「鰯」の仲間で、捕食しやすく、また、骨が柔らかく消化吸収がよいと考えられる魚です。

魚は群れに突っ込んでいるのではなく、ダメージを受けて群れから脱落した固体を捕食し、群れがばらけたところで、個々の固体を連鎖的に捕食し、「ナブラ」を発生させているのです。

かつて釣り雑誌にレポートを投稿するために調べたことがあるのですが、ミジュンとセットになって泳いでいる、トウゴロウイワシの仲間(トウゴロウイワシ目)と食べ比べたことがあるのですが、ミジュンは柔らかく食べやすいのに対し、トウゴロウイワシは食べにくく、魚にとって捕食の対象としてはミジュンよりも低価値にあるのではないかと考えています。


安里川では年々アシチンの群れが減っています。
今年はアシチンの群れが戻ってきて、水面を割るガーラの姿も見ることができましたが、私がルアーをはじめた13年前に比べると、ボイルの回数もアシチンの量は比例していて、明らかに減っています。

水質上問題ないはずなのですが、なぜでしょうか?


護岸改修工事の影響もあると思います。
また、下流で行われている浚渫工事の影響も心配ではあります。
市民の財産を守るための治水工事であるために必要とは思いますが、橋の下が掘削されていないなど、効果に疑問を持つところもあります。(きちんとコンサル等専門家が設計しているかな?)

しかし、私は何気ない人の生活が大きく影響しているのではないかと思うのです。

その原因として見ているのは、どの程度効果が持続するのかわからない、洗剤等に含まれる除菌剤の存在です。
水道水の消毒剤でわかるとおい、独特のにおいがする塩素系の除菌剤はばっ気することで抜けてしまうようなのですが、「除菌」をうたう市販の洗剤に含まれる謎の除菌剤の効果は、どの程度で持続力も不明です。

中学のときに習ったと思うのですが、「植物プランクトンを動物プランクトンが食べて、小魚が食べて、大きな魚や鳥が食べて、その死骸や糞がバクテリア(菌)に有機物から無機物に分解されて、植物プランクトンや植物の栄養となる」という食物連鎖のサイクルがあります。

このサイクルにはバクテリアが不可欠なのですが、わずかに垂れ流しされた除菌剤によってカットしているのではないかと思うのです。
(下水道を整備することにより、下水処理場へすべて繋いでしまえば問題ないと考えてしまいそうですが、下水処理場もバクテリアを利用して水質浄化を行っているので、果たして効果的に浄化が行われているか疑問でもあります)


国場川では、1万羽の鳥を戻す活動が行われていて、鳥が減っているのはマングローブが増えたのが原因とか、カヤックで鳥が逃げてしまうなどの議論がされているようです。
しかし、私は単純に「エサが減っているから」だと思うのです。

たしかに干潟にはトントンミー(ミナミトビハゼ)や多くのカニ類がいて、豊かには見えるのですが、果たして戻したい鳥達が好むものなのか。遠くから飛来して、カロリーを補える価値のある生き物が、必要量以上に生息しているのか。
そこに問題があるのではないかと見ているのです。

魚の場合、釣って食べるときに胃袋を開けて確認することで傾向を調べることができますが、鳥の場合は目視観察になります。
私は鳥について素人なので断言できないのですが、人や魚に好みがあるように、鳥にも好みがあって、条件に満たないのが国場川の今の環境・・・ということではないかと思うのです。

環境を整えるために大事なことは、生態系のメカニズムをしっかりと理解し、「菌と人とのつながり」を考えて人が潔癖になりすぎない事だと思います。
洗剤メーカーにも、排水する場合の「除菌剤の中和剤」をセット販売を望みたいところです。


有用微生物培養菌の液や固形物を河川などへ投入する方法も考えられると思います。
しかし、決してメリットだけではなく、むしろデメリットが多い行為だと思います。

そもそも除菌剤が流れているだろうと考えられる河川に撒いても無意味でしょうし、培養するための有機物を大量に撒くことになります。
有機物が分解されないと、ヘドロになってしまうと考えられます。
(有機物の投入が、水質汚濁防止法に抵触する可能性もあるようです)


また、この記事で書いたとおり、生き物には好き嫌いがあるようで、小さな菌にも好き嫌いがあるのではないかと思います。
つまり、撒いた菌がどのように作用していくのか不明な部分も多く、元々生息していた菌を駆逐して、根底から生態系を変えてしまう危険もあります。もし菌の投入が原因で生態系が覆されたとしても、見えない菌相手では、原因を調べることは困難なのです。

ハブの天敵になると考えたマングースは、ハブの天敵としての役割を果たさず、本来沖縄に生息していた野生の生き物へ影響を与えていますね。生態系への介入は、人が思うよう向かっていかないものなのです。
生態系を考えるのであれば、有用微生物培養製品は、あくまでも人の生活圏への活用のみにとどめるべきだと思います。



話が大きくなってしまったのですが、それぞれ生き物には生態構造的な好みがあって、その結びつきが生態系だと思います。

釣りはどうしても道具から入ってしまいがちなのですが、生態系の中で釣りをしているという意識を持つことで、色々な釣りを楽しむこともでき、釣果も伴ってくると思います。
また、減っていく魚をどうやって守り、育てていくのか。そのヒントを得て、行動へ移すきっかけになると思います。


はじめの一歩は、人と同じように生き物にも好物や好き嫌いがある、ということを理解することなのかもしれません。

(sacom)

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